Obsidian×Claude Code連携で「24時間AI秘書」を構築する方法 ― Greg Isenbergが公開し話題に
スタートアップ投資家Greg IsenbergがObsidianとClaude Codeを組み合わせた「AIエージェント秘書」の構築方法を公開し、PKM(Personal Knowledge Management)界隈が大きくざわついている。AIがMarkdownファイルの知識ベースを構造ごと読み解き、思考の整理からアイデア生成まで自動化できるという。その仕組みをX上の反響も交えながら解説していく。

話題の発端 ― X上での反響と拡散
X(旧Twitter)ユーザーの@obsidianstudio9(りゅう@Obsidianガチ勢)氏が、Greg Isenbergのポッドキャスト動画の要点をまとめた投稿を公開し、大きな反響を呼んだ。さらに@ClaudeCode_UT(東大ClaudeCode研究所)氏からは、海外でObsidian Vault構築の代行ビジネスが盛り上がっているという投稿も注目を集めている。
@obsidianstudio9氏の投稿でまとめられた要点は以下の通りだ。
- 全てをMarkdownで書く(日報、プロジェクト、信念、人脈、議事録)
- ノート同士を脳の思考回路のようにリンクする
- Obsidian CLIを導入してClaude Codeを接続する
- AIが自分の代わりに思考を整理する
一見シンプルに見えるが、動画で語られている内容はもっと奥が深い。ここからは動画の内容に沿いながら、詳しく見ていこう。
Greg Isenbergとは ― スタートアップ界の重鎮が注目した理由
Greg Isenbergは、スタートアップスタジオ「Late Checkout」のCEOで、複数のスタートアップの創業・売却経験を持つ起業家・投資家だ。自身のポッドキャストやXアカウント(フォロワー数十万規模)を通じてインターネットビジネスやAI活用のトレンドを発信する人物であり、彼が取り上げるテーマは毎回大きな反響を生む。
今回のポッドキャストには「Internet Vin」ことVin氏がゲスト出演。約1時間にわたり、ObsidianとClaude Codeを組み合わせた「セカンドブレイン(第二の脳)」としてのAI活用法が実際のデモを交えて語られた。Greg Isenberg自身が「もし自分がOpenAIやAnthropicなら、Obsidianを買収する」と言い切るほど、その可能性に興奮を隠せなかったほどだ。
ObsidianとClaude Codeの基礎知識

Obsidian ― ローカル完結型のナレッジ管理ツール
Obsidianは、ローカルのMarkdownファイル群を「Vault(保管庫)」として管理するPKM(Personal Knowledge Management)ツールだ。個人利用は無料で、Windows・Mac・Linuxに対応している。
最大の特徴は、ノート同士を双方向リンク([[ ]]記法)で結びつけられること。普通のフォルダ構造ではファイルを階層的に並べるだけだが、Obsidianは脳のニューロンのようにファイル間の関係性を可視化する。グラフビューと呼ばれる機能を使えば、自分の知識がどう繋がっているかを一目で確認でき、自分だけのナレッジグラフを作ることができる。
データはすべてローカルのMarkdownファイルとして保存されるため、特定のサービスにロックインされない。この「プレーンテキストであること」が、後述するAIエージェントとの連携において大きな強みになるのだ。
Claude Code ― Anthropicのコマンドライン型AIエージェント
Claude Codeは、Anthropicが提供するコマンドライン型のAIエージェントである。ターミナル上で自然言語の指示を出すと、ファイルの作成・読み取り・編集、コマンドの実行といった作業を自動で実行してくれる。
利用にあたっての注意点として、Claude Codeは無料では利用できない。Anthropic APIのクレジット(従量課金)、またはAnthropic Maxプラン(月額サブスクリプション)のいずれかが必要だ。動画内でVin氏がデモしている規模の処理(大量のファイル読み込み・分析)は相応のトークン消費を伴うため、事前にコスト感をつかんでおきたい。
動画の中でVin氏は「デスクトップに”Hello, Greg”と書いたファイルを作って」と指示するだけでファイルが生成されるデモを示していた。プログラミングの知識がなくても、やりたいことを自然言語で伝えればコンピュータを操作できるのがClaude Codeの強みである。
両者をつなぐ「Obsidian CLI」とは
動画の中でVin氏が紹介していた「Obsidian CLI」は、Claude CodeがObsidian Vault内のファイルを構造的に読み取るためのツールだ。
重要な補足:「Obsidian CLI」はObsidian公式が提供するツールではなく、Vin氏が構築した仕組み、またはコミュニティが開発したサードパーティツールと考えられる。動画内でその正確な出典や公開リポジトリは明示されていない。再現を試みる場合は、Obsidianの公式フォーラムやGitHub上のコミュニティプロジェクトを確認するとよい。
このツールにより、Claude Codeは単にMarkdownファイルのテキストを読むだけでなく、ファイル間の双方向リンク、つまりバックリンクやリンクグラフといった関係性の情報まで取得できるようになる。ここが核心となるポイントだ。通常のRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)ではテキスト検索に依存するが、Obsidianの構造情報を活用することで、知識のネットワーク全体を理解した上でのAI処理が可能になる。
なぜ「ファイルの関係性」がAIの出力を変えるのか
動画でVin氏が強調していたのは、「AIに渡すコンテキスト(文脈)の質がすべてを決める」という点だ。多くの人がChatGPTやClaudeをWeb上で使っているが、メモリに何が入っているか把握できていない。何を覚えていて何を覚えていないかが不透明なままだ。
Obsidian Vaultを使えば、自分が管理するMarkdownファイルそのものがAIへの入力になる。しかも双方向リンクの構造情報もAIに渡せるため、AIがあなたの思考の「構造」 ― どのアイデアがどのプロジェクトに紐づき、どの人物とどの文脈で繋がっているか ― を理解できるということだ。
Vin氏はこう語っている。「AIは、あなたが1年間Vaultに書き続けてきた潜在的なアイデアを即座に発見できる。複数のドメインにまたがって同じパターンについて書いていることを指摘してくれる。これを初めて見たとき、巨大な電球が点灯するような体験になる」
Greg Isenbergの言葉を借りれば、「人々はトークンがAIの酸素だと思っている。でも違う。Markdownファイルこそが記憶だ」。人間の記憶が曖昧で変質するのに対し、ファイルに書かれた記録は完璧な記憶として機能する。その完璧な記憶をAIに渡すことで、人間単体では不可能な思考の接続が実現するわけだ。
Vin氏が自作したカスタムコマンド一覧

Vin氏がデモで披露したカスタムコマンドは圧巻だった。これらはすべてVin氏が独自に作成したものであり、Claude Codeの標準機能ではない。Claude Codeの「カスタムスラッシュコマンド」機能(.claudeディレクトリ内にMarkdownファイルとして定義する仕組み)を活用して構築されている。
現時点で公開リポジトリやコマンド定義ファイルの配布は確認できていない。以下はあくまで動画内のデモと説明に基づく内容であり、そのまま再現できるわけではない点に留意してほしい。
/context ― フルコンテキストのロード
自分の人生・仕事・現在の状態に関するフルコンテキストをロードするコマンド。コンテキストファイル、日報、バックリンクをたどって全体像を構築する。新しいセッションを開始するたびにゼロから説明し直す必要がなくなるのが強みだ。
/today ― その日のAIプランナー
カレンダー、タスク、iMessage、過去1週間の日報を読み込み、その日の優先順位付きプランを生成する。単なるスケジュール管理と異なるのは、日報に書いた自分の関心事や思考も加味される点だ。カレンダーの予定が、自分が実際に書いている内容と一致しているかどうかまでチェックしてくれる。
iMessageの読み込みについて:macOSではiMessageのデータがローカルのSQLiteデータベース(~/Library/Messages/chat.db)に保存されている。Claude Codeはターミナルからこのデータベースにアクセスできるため、特別な外部連携なしにメッセージの読み取りが可能と考えられる。ただし、macOSのセキュリティ設定(フルディスクアクセス権限)の許可が必要だ。
/close day ― 1日の振り返りと接続
1日の終わりにアクションアイテムを抽出し、Vault内の関連ノートとの接続を発見する。仮説に対する確信度マーカーの更新チェックまで行う。
/ghost ― 自分の分身を生成
Vault内のデータから「自分の声」のプロフィールを構築し、「自分だったらどう答えるか」を再現する。自分の分身がそこにいるかのような回答が生成される。
/challenge ― 信念のプレッシャーテスト
Vault内の履歴を使って現在の信念をプレッシャーテストする。矛盾点、反証、思考の変遷を見つけ出す。自分の偏見や限界を客観視するためのコマンドだ。
/emerge ― 暗黙のアイデアを表面化
Vaultが「暗示しているが明言していない」アイデアを表面化させる。散らばった前提から結論を導き出し、名前のないパターンや言語化されていない方向性を発見する。
/drift ― 意図と行動のズレを検出
30〜60日間にわたり、宣言した意図と実際の行動を比較する。自分が何を避けているかを浮き彫りにしてくれる。
/ideas ― クロスドメインのアイデア生成
30日分のVaultを深くスキャンし、クロスドメインのパターン検出とグラフ分析を行い、あらゆる領域にまたがるアイデアを生成する。ツールの提案だけでなく、調査テーマや会うべき人物の提案まで含まれる。
/trace ― アイデアの進化を追跡
ある特定のアイデアがVault内で時間とともにどう進化してきたかを追跡する。
/connect ― 異なるドメインの橋渡し
二つの異なるドメインをVaultのリンクグラフを使って接続する。例えば「映画制作」と「ワールドビルディング」を接続すると、自分のノートの中から両者をつなぐ橋を見つけ出してくれる。
デモで示された実例 ― 思考の進化とアイデア生成
/traceコマンドによる「思考の進化」追跡
特に印象的だったのは/traceコマンドのデモだ。Vin氏が「Obsidianの使い方」というテーマでtraceを実行すると、AIがVault内の全ファイルとその関係性を読み込み、以下のような進化の軌跡を出力した。
2024年12月の「Vault以前」の段階では、MacWhisperでの音声メモ、LLM対話ループ、物理ノートブックなどを使っており、Obsidianは全く登場しない。2025年1月〜5月の「発見と懐疑」フェーズでは、「双方向リンクはそこまで有用ではないかも」と書いている。その後、「一般的な用語ではなく、自分のパターン、理論、プロジェクト、視点のためにノートを作ってリンクすべき」という転換点を経て、「爆発的な構築の月」に突入。「摩擦はもはやObsidian自体にはなく、Vaultとエージェント実行の境界にある」と記している。
この一連の分析を人間が手動で行おうとしたら、膨大な時間がかかるだろう。AIがファイル間の関係性まで含めて横断的に読み解くからこそ可能になる分析である。
/ideasコマンドによるアイデア生成レポート
動画後半では/ideasコマンドのデモも披露された。実行に5分以上かかるほど大量のファイルを読み込み、最終的に出力されたのは「アイデア生成レポート」だった。
構築すべきツール、使い始めるべきシステム、実装すべき仕組み、調査すべきテーマ、書いて公開すべき記事、会うべき人物 ― Vaultに蓄積された思考データから、具体的なアクションプランが次々と提案される。しかもそれは一般論ではなく、Vin氏が日々書き溜めたノートの内容に深く紐づいた、極めてパーソナルな提案だ。
Vin氏が徹底するルール ― AIにVaultを「書かせない」

動画の中で語られていた重要な原則がある。Vin氏は、AIにVault内のファイルを「書かせない」ルールを自分に課している。AIが生成したファイルがVaultに混在すると、パターン検出の結果が「自分の思考」なのか「AIの思考」なのか区別がつかなくなるからだ。
Vaultはあくまでも自分の思考の記録であり、AIはそれを読み解くパートナーという線引きを徹底している。セカンドブレインの「脳」にあたる部分は人間が書き、AIはその脳を読み解く「分析パートナー」に徹するという思想だ。
海外で急成長するObsidian Vault構築代行ビジネス

AIの最新情報などを発信する@hoeem(hoeem)氏がXで投稿した内容によると、海外ではObsidianのVault構築を代行するビジネスが実際に成立しているという。
投稿で紹介されていた料金体系はこうだ。
- 初期構築: 約24万円(※投稿内の情報に基づく概算。為替や具体的サービスにより変動の可能性あり)
- 年間メンテナンス: 約8万円
- 200件の顧客で年間約1,600万円の定期収入
ターゲットは弁護士、医者、コンサルタント、投資家。つまり「情報に溺れているけれど、整理する時間がない人たち」だ。@hoeem氏は「実質の構築はほぼAIがやってくれるから、設計を上手くやればめっちゃ稼げそう」とコメントしている。
このビジネスモデルの面白いところは、初期構築だけでなく年間メンテナンスという継続収入が見込める点だ。Vaultは使い続けるほど蓄積データが増え、構造の最適化やAIエージェントとの接続設定の更新が必要になる。一度構築したら終わりではなく、継続的なサポートが求められる構造になっているわけだ。
ちょっと待ってくれ。初期構築24万円、年間メンテナンス8万円、200件で年1,600万円?この計算、ちょっと怖すぎる。つまりまじで「Vaultセットアップ業」だけで中産階級になれるってことか。思わず声が出てしまった。
なぜ今「Obsidian×AI エージェント」が爆発的に注目されているのか
ObsidianもClaude Codeも、それぞれ単体では以前から存在していたツールだ。では、なぜ今この組み合わせがここまで注目されているのか。背景には3つの要因がある。
1. ファイル構造をAIが読める仕組みの登場
動画内でVin氏が説明している通り、Obsidian CLIのような仕組みによってClaude Codeがファイルの内容だけでなく、ファイル間のリンク構造(関係性)も読み取れるようになった。単なるテキスト検索(一般的なRAG)ではなく、知識のネットワーク全体を理解した上でのAI処理が可能になったことが決定的な違いだ。
2. AIエージェントの成熟
Claude Codeのようなエージェントがコンピュータを自然言語で操作できるレベルに達し、「ファイルを読んで → 分析して → 新しいファイルを作る」という一連の流れをシームレスに実行できるようになった。以前なら専用のスクリプトを書く必要があった処理が、自然言語の指示だけで完結するようになったのだ。
3.「コンテキストの質がAIの出力を決める」という認識の広がり
多くの人がChatGPTやClaudeを使いこなせていないのは、適切な文脈を適切なタイミングで渡せていないからだ。Obsidianは、その「文脈のデータベース」として最適な形式 ― 構造化されたMarkdownファイルの集合体 ― を提供する。PKMツールとしてのObsidianの蓄積が、そのままAIの「長期記憶」として機能する構図だ。
筆者コメント ― Claude Codeで記事制作パイプラインを構築している立場から
正直に言おう。この動画の内容には、単なる「面白い情報」以上のリアリティを感じている。
というのも、筆者自身がまさに今、Claude Codeを使ってKINTELAでの制作パイプラインを構築しているからだ。SNS投稿の収集から記事雛形の執筆、メタ情報の生成まで、一連のワークフローをClaude Codeで自動化・半自動化している。その体験から断言できるのは、AIエージェントを自分の仕事に組み込むと生産性が劇的に変わるということだ。
Obsidianとの連携は、その延長線上にある極めて自然な発展だと感じる。記事制作で言えば、過去に書いた記事、取材メモ、トレンド分析、自分の視点 ― これらがMarkdownファイルとしてVaultに蓄積されていたら、新しい記事を書くときにAIが「過去にこういう視点で書いていたけど、今回のテーマとこう繋がる」と提案してくれる可能性がある。
動画でVin氏が語っていた/ghostコマンド ― 「自分だったらどう答えるか」をVaultの記録から再現するコマンド ― を見たとき、クリエイターにとっての可能性を強く感じた。自分の文体、視点、価値観をVaultに蓄積し続ければ、それはまさに「自分の分身」のデータベースになる。
そして@ClaudeCode_UT氏が紹介していた構築代行ビジネスの話。AIツールの活用自体がビジネスになる時代が来ているという証左だ。情報に溺れている専門家にとって、自分専用のAI秘書環境を構築してもらえるなら、初期構築費は十分にペイするだろう。日本でもこの流れは遅かれ早かれ来るはずだ。
一方で、動画内でも言及されていたプライバシーの問題は無視できない。Vaultに入っている情報は極めてパーソナルなものだ。Vin氏自身、デモのために全コマンドの「デモ版」を作り直したと語っていたし、それでも画面に何が映るかコントロールしきれないと苦笑していた。AIに自分の思考の全体像を渡すことの利便性と、そのリスクのバランスは、各自が真剣に考える必要がある。
まとめ ― Markdownが「AIの長期記憶」になる時代
Obsidian×Claude Codeの組み合わせが示しているのは、「コンテキストの質がAIの出力を決める」というシンプルかつ強力な原則だ。日々の思考をMarkdownファイルに書き溜め、それらを双方向リンクで結び、AIエージェントがその構造ごと読み解く。結果として、人間単体では気づけないパターンの発見、思考の進化の追跡、クロスドメインのアイデア生成といった、セカンドブレインの真価が発揮される。
Greg Isenbergは「LLMを本気で活用したいなら、Markdownベースの集約的なノートツールを使っていないのは、LLMを適切に使えていないということだ」と語った。強い言葉だが、動画のデモを見た後では否定しにくい。
重要なのは、これが特別な技術者だけのものではないということだ。Obsidianは個人利用無料のツールであり、Claude Codeも自然言語で操作できる(ただし有料サービスである点は留意が必要だ)。必要なのはツールの知識よりも、日々の思考を書き留める「習慣」の方だ。Vin氏も「書くことがアイデアを生む方法であり、オリジナルな思考を形成する方法だ」と繰り返し強調していた。
まずはObsidianをダウンロードして、今日のことを1つ書いてみる。それが「24時間365日動くAI秘書」への第一歩かもしれない。
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