無料のオープンソース・クリエイティブアプリ13本「ArtCraft Crafting Apps」が公開

Photoshop風の「PhotoCraft」など、無料・オープンソースのクリエイティブアプリ13本「ArtCraft Crafting Apps」が公開

ArtCraftチームが、画像編集から表計算まで、クリエイティブ系を中心とした13ジャンルのアプリを無料・オープンソースで提供するプロジェクト「Crafting Apps」を公式サイト(getartcraft.com)で公開した。対象ジャンルは画像編集、ベクター、動画、写真現像、PDF、モーショングラフィックス、DTP、UIデザイン、文書作成、音楽制作(DAW)、プレゼン、CAD、表計算の13種類。すべてプログラミング言語のRustでゼロから書かれており、macOS・Windows・Linuxに対応する。10月に入ると、画像編集アプリ「PhotoCraft」を中心に、海外メディアやフォーラムで試用レポートが相次いで公開された。ただし10月15日時点で、全アプリが「Early alpha(初期アルファ)」か「In development(開発中)」の段階にある。

Crafting Appsのアプリアイコン7種(左からPhotoCraft、VectorCraft、FilmCraft、LightCraft、PdfCraft、EffectCraft、DesignCraft)
Crafting Appsのアプリアイコン7種(左からPhotoCraft、VectorCraft、FilmCraft、LightCraft、PdfCraft、EffectCraft、DesignCraft)(画像:ArtCraft公式サイト)

この記事の要点

  • ArtCraftチームが、画像・動画・音楽などクリエイティブ系を中心とした13ジャンルのオープンソースアプリを無料で公開している
  • Rust製のネイティブアプリで、CLI・JSON・MCPサーバー経由でAIエージェントから操作できる設計をうたう
  • 海外では動作の軽さや機能の多さを評価する声がある一方、初期アルファゆえの不具合や機能不足も指摘されている
目次

Crafting Appsとは?13ジャンルの制作ツールを1チームで開発

写真編集ソフトウェアのインターフェース画面で、モノクロ山岳風景写真の調整パネルが表示されている
写真編集ソフトウェアのインターフェース画面で、モノクロ山岳風景写真の調整パネルが表示されている

写真編集、動画編集、デザイン、資料作成といった制作作業では、ジャンルごとに別々の有料ソフトを使い分けるのが一般的だ。Crafting Appsは、こうした制作ツール一式を1つのチームがオープンソースで作り直そうとする試みである。

公式サイトのキャッチコピーは「Thirteen apps. One craft.」。各アプリの紹介文には「使い慣れた操作がそのまま通じる画像エディタ」「Rustでゼロから作り直したプロ向け動画編集」(いずれも意訳)といった文句が並ぶ。プロが普段使っている操作感を、無料・オープンソースで再現することを狙っていると読み取れる。

「オープンソースで映像・制作ツールを作る」という流れでは、以前KINTELAでもHTMLからMP4動画を自動生成するOSS「Hyperframes」HeyGenが無料公開を取り上げた。ただし、Crafting Appsは特定の作業に絞らず、制作ソフトのラインナップ全体を揃えようとしている点で規模が大きい。

13本のアプリ一覧・特徴・価格(全アプリ無料)

モーショングラフィックス編集ソフトのタイムラインと再生画面を表示した作業風景
モーショングラフィックス編集ソフトのタイムラインと再生画面を表示した作業風景

以下は、公式サイトの発表と掲載スクリーンショットに基づく。

13本のアプリと開発状況

グリッド上にレイアウトされた複数段組みの記事ページと日没風景画像の組版デザイン
グリッド上にレイアウトされた複数段組みの記事ページと日没風景画像の組版デザイン
アプリ名 ジャンル 開発段階 対応環境 既存ソフトでいえば(参考)
PhotoCraft 画像編集 Early alpha macOS / Windows / Linux / Web Photoshop、GIMP
VectorCraft ベクターイラスト In development macOS / Windows / Linux / Web Illustrator、Inkscape
FilmCraft 動画編集 In development macOS / Windows / Linux Premiere Pro、DaVinci Resolve
LightCraft 写真ライブラリ・RAW現像 In development macOS / Windows / Linux / Web Lightroom、darktable
PdfCraft PDFの閲覧・整理・結合・分割・保護 Early alpha macOS / Windows / Linux / Web Acrobat
EffectCraft モーショングラフィックス・VFX In development macOS / Windows / Linux / Web After Effects
DesignCraft ページレイアウト・出版 In development macOS / Windows / Linux / Web InDesign、Scribus
FigCraft UIデザイン・プロトタイピング Early alpha macOS / Windows / Linux / Web Figma
WordCraft 文書作成 In development macOS / Windows / Linux / Web Word、LibreOffice Writer
SoundCraft DAW(録音・編集・ミックス) In development macOS / Windows / Linux / Web Logic Pro、Ardour
DeckCraft プレゼンテーション In development macOS / Windows / Linux / Web PowerPoint、Keynote
CADCraft CAD・製図 In development macOS / Windows / Linux / Web AutoCAD、FreeCAD
GridCraft 表計算・データ分析 In development macOS / Windows / Linux / Web Excel、LibreOffice Calc

※アプリ名・ジャンル・開発段階・対応環境は公式サイトの表記に基づく。「既存ソフトでいえば(参考)」の列は、用途をイメージしやすくするための筆者による補足であり、公式が互換性や同等性をうたっているものではない。全アプリに「Installers ready(インストーラー提供中)」と表示されており、「In development」のアプリもインストーラー自体は入手できるようだ。

価格はいずれも無料。公式は「ArtCraft Launcher」の利用を推奨しており、これを使えば全アプリを一括でインストールでき、常に最新版に保てるという。各アプリのページから個別のインストーラーも入手できる。

全アプリ共通の6つの方針

  • オープンソース:全コードをGitHubで公開し、ライセンスには改変や再利用の自由度が高い「permissive(寛容な)」ものを採用するとしている
  • ネイティブ動作:Rustのコードから、ネイティブのデスクトップアプリとして直接ビルドしているという。Webの技術でアプリを包む「Electron」やWebビューは使っていないとする
  • 最初から使い慣れた操作感:プロが普段使うレイアウト・ツール・ショートカットに合わせ、操作を覚え直さずに済むことを目指す
  • ローカル処理:ファイルの処理はすべて手元のPCで完結する。作業中にクラウドとのやり取りは発生しないとする
  • AIエージェント対応:コマンドライン(CLI)、JSONの制御チャネル、MCPサーバーから全アプリを操作できるとしている。MCPはAIが外部ツールを操作するための共通規格で、自動化やAIエージェントでの利用を想定している
  • ブラウザ版:FilmCraftを除く12本は、Webブラウザ上でプログラムを動かす技術「WebAssembly」にも対応し、タブを開くだけで使えるとしている

AIエージェントから制作ツールを直接動かすという設計は、KINTELAで紹介してきた動きとも通じるところがある。たとえばテキストや図表を動かす説明アニメ機能「Claude Motion」とダッシュボード機能がベータ公開は、AIが映像表現を組み立てる流れの一例だ。また、AIエージェントに日常の定型作業を任せるという点では、Obsidian×Claude Codeで24時間AI秘書を作る方法で紹介した使い方と方向性が近い。

スクリーンショットから分かること

公式サイトには、各アプリの作業画面のスクリーンショットが掲載されている。主な内容は次のとおりだ。

  • PhotoCraft:葛飾北斎「神奈川沖浪裏」(パブリックドメイン)を開いた画面。3968×2964pxの画像に9つのレイヤーがあり、トーンカーブ調整のパネルも見える
  • VectorCraft:「NEON DRIVE」と書かれた作例で、「VECTOR – PURE RUST – 60 FPS」の表記がある。文字のサイズ・字間(トラッキング)・描画モード「Screen」・不透明度などのパネルが並ぶ
  • FilmCraft:タイムコード付きのタイムラインに、映像トラック「Video 2」と音声トラック「Audio 1〜3」が並ぶ
  • LightCraft:露光量、コントラスト、ハイライト、シャドウ、白レベル、黒レベル、テクスチャ、明瞭度、かすみの除去、周辺光量といった、写真現像でおなじみの調整項目が並ぶ
  • EffectCraft:コンポジション、エフェクト、レイヤーのパネルに加え、位置・スケール・回転・不透明度のプロパティや、テキストアニメーターの項目がある
  • SoundCraft:音声波形とMIDIトラックが並ぶマルチトラックの編集画面(Editウィンドウ)で、ルーラーやマーカー、トランスポート(再生・録音などの操作部)も見える
  • PdfCraft:書体見本のPDFを表示した画面
  • DesignCraft:雑誌風のページレイアウトが組まれた画面
  • FigCraft:ハイキングアプリのUIデザインを開いた画面
  • WordCraft:英文の文書(1,067語)が開かれた編集画面

Adobe・GIMP・DaVinci Resolveなどとの比較

参照した情報源には既存ソフトとの直接の比較がないため、ここでは筆者の知識の範囲で整理する。

画像・動画・デザインの分野では、Adobeのクリエイティブアプリ群が定番だ。サブスクリプション(月額・年額課金)で提供され、プロの現場で広く使われている。一方、オープンソースにも画像編集のGIMP、ベクターのInkscapeといった長い歴史を持つ無料ソフトがある。動画編集ではオープンソースのKdenliveがあるほか、オープンソースではないもののDaVinci Resolveに無料版がある。

Crafting Appsが扱うジャンルは、Adobeの守備範囲より広い。文書・表計算・プレゼンならMicrosoft OfficeやLibreOffice、UIデザインならFigma、CADならAutoCADなどが代表的な選択肢である。音楽制作では、オープンソースのArdourといったDAWも存在する。つまりCrafting Appsは、複数のメーカーのソフトがそれぞれ担ってきた領域を、1つのプロジェクトでまとめてカバーしようとしている。

既存ソフトと比べたときのCrafting Appsの違いは、主に次の3つだ。

  1. 1つのチームが13ジャンルを同じ方針でまとめて開発していること
  2. プロが使い慣れた操作感を最初から目指していること
  3. AIエージェントからの操作を前提に作られていること

一方で、成熟度は既存ソフトに遠く及ばない。現時点では「比べる対象」というより、「今後に期待する候補」と見るのが妥当だ。

PhotoCraftの海外レビュー・評判

Linux系ニュースサイトのOMG! Ubuntu(Joey Sneddon氏、10月8日)は、PhotoCraftの機能面を好意的に取り上げている。アルファ版ながらレイヤー、マスク、PSD形式への対応など機能が充実し、非力なノートPCでも起動が速いという。ただし、Photoshopとの類似は表面的なものにとどまるとも指摘する。出力結果の差、バグ、機能不足が重なるため、プロ用途の代わりにはならないとの見方だ。記事はこの評価を「Photoshopに不気味なほど似ているが、Photoshopらしく感じられるまでにはまだ距離がある(While this gets uncannily close to resembling Photoshop, it’s some way off feeling like it’s Photoshop.)」とまとめている。

スペインのJacar(Javier Cañete氏、10月13日)は、ARM版LinuxでPhotoCraft 0.8.2とPdfCraft 0.7.1を実際に試した。ターミナル、MCP、ブラウザ(WebAssembly)のいずれからでも動作したと報告している。ただし、全体としてはまだ初期アルファだという。WebGPUではキャンバスが表示されないこと、ホスト型のWeb版がないことも指摘している。

PC系コミュニティのLevel1Techs Forumsでは、「PhotoCraft: vibecoded Photoshop clone」というタイトルのスレッドが立った。vibecodedは、AIに大部分のコードを書かせる開発スタイルを指す言葉だ。開発手法について公式サイトの説明は確認できないが、OMG! Ubuntuも見出しで「AIで作られた(AI-built)クローン」と紹介している。Jacarによれば、PhoronixもClaude CodeなどのAIエージェントが主に作ったと報じており、PdfCraftのリポジトリにはCLAUDE.mdとAGENTS.mdが置かれているという。ユーザーのparxysm79氏は、Ubuntu 26.04でAppImage版と.deb版の両方を試し、「とてもよく動く」と好意的に評価した。一方で、Linuxの新しい画面表示の仕組み(ディスプレイサーバー)であるWaylandに未対応のため、使えない部分があるとも書いている。また同氏は、人気があっても課金の仕組みが多くのユーザーに嫌われているソフトは、このようにオープンソースで再現されるリスクがあるとも述べている。

同じスレッドのlae氏は慎重な姿勢だ。実際の利用で十分に鍛えられ、開発が続いているかを確かめてから、数か月後に試すかもしれないとしている。Waylandが最初から正式サポートされていない点にも驚いていた。

また、スレッド内では別のユーザーから「訴訟の匂いがする」という書き込みもあった。Photoshopとの見た目の類似から、権利面の問題を懸念する声も出ている。

筆者コメント:率直な評価

ArtCraftがAdobeの代わりになる無料アプリ群を開発したという話が本当なら、インパクトは大きい。これまでAdobeの高い料金を払いながら編集を続けてきたクリエイターは多い。そういう人たちが、こぞってこのサービスを試すのではないかと思う。私自身も映像やデザインの仕事でソフトの月額費用を払い続けている。だから「無料で、しかも慣れた操作感のまま使える」という打ち出しの魅力はよく分かる。

ただ、品質はまだ不安定だ。海外ではすでに不具合や機能不足がいろいろ報告されている。新しく開発されたソフトウェアである以上、無料で手に入る代わりに安定性や完成度を我慢するというトレードオフは避けられないと思う。動画編集やモーショングラフィックスは、プロジェクトが重くなるほど1回のクラッシュで失う作業時間も大きくなる。仕事の本番データを今すぐ預けられる段階ではない。

とはいえ、最近のAIの進化は本当にすさまじい。ツールの側は、毎日というレベルでアップデートを繰り返している。海外フォーラムで「vibecoded」と呼ばれているように、AIを使った開発のスピードが生かされているのだとすれば話は変わってくる。このアプリの開発チームが総力を上げて本格的に作り込み始めたら、問題なく使える編集アプリになる可能性は十分ある。そうなれば乗り換えるクリエイターも多いだろうし、Adobeにとってはかなりの脅威になるのではないかと思っている。

自分が実際に使うなら、まずは本番に影響しない作業から試す。PDFの結合や分割、SNS用の簡単な画像加工、写真のちょっとした現像などだ。動作の軽さや操作感を確かめつつ、アップデートの頻度を見守る。メインの編集環境をすぐ乗り換えるつもりはない。ただ、AIエージェントから操作できる設計は、日々の定型作業を自動化したい身として気になるポイントだ。数か月後にどこまで仕上がっているかは、定期的にチェックしたい。

こんな人におすすめ・総評

動画編集ソフトウェアで映画トレーラーのシーンを編集・タイムラインで処理している作業画面
動画編集ソフトウェアで映画トレーラーのシーンを編集・タイムラインで処理している作業画面

現時点でおすすめできるのは、新しいオープンソースソフトを試すのが好きな人だ。サブスクリプション費用を見直したいと考えていて、メインの環境は残したまま無料ツールの成長を見守れる人にも向いている。AIエージェントやMCPで制作ツールを自動化したい、エンジニア寄りのクリエイターにとっても触ってみる価値はある。

逆に、仕事の納品に使うソフトを今すぐ置き換えたい人には時期尚早だ。13本すべてがアルファか開発中の段階にあり、海外の試用レポートでも不具合や機能不足が指摘されている。総合すると、構想の大きさとAI時代らしい設計は注目に値する。ただし実用性はこれからで、「今は試しながら見守る段階」というのが筆者の評価である。

本記事の情報は執筆時点(2026年10月15日時点)のものである。開発段階や対応環境は今後変わる可能性があるため、最新情報は公式サイトで確認してほしい。

よくある質問

Q. 日本からダウンロードして使えるか?

A. 公式サイトから、macOS・Windows・Linux向けのインストーラーや、全アプリをまとめて管理する「ArtCraft Launcher」を入手できる。地域制限の有無は、公式情報では確認できない。

Q. 日本語に対応しているか?

A. 日本語のメニュー表示や日本語入力に対応しているかは、公式情報では確認できない。

Q. 本当に無料なのか?商用利用はできるか?

A. 公式サイトでは無料で使えると明記されている。ソースコードはGitHubで公開し、寛容な(permissive)ライセンスを採用するとしている。PhotoCraftの公式GitHubリポジトリには「MIT OR Apache-2.0」(MITとApache 2.0のどちらかを選べるデュアルライセンス)と明記されている。Jacarの報告によれば、他のアプリのリポジトリも同じ形式だ。どちらも商用利用を認めるライセンスだが、ArtCraftの名称・ロゴ・ブランドは対象外とされる。詳しい条件は各リポジトリのライセンスファイルで確認してほしい。

Q. PhotoshopのPSDファイルは開けるか?

A. OMG! Ubuntuの試用レポートでは、PhotoCraftがPSD形式に対応していると紹介されている。ただし同記事は、出力結果にPhotoshopとの差があるとも指摘している。

Q. インストールせずにブラウザだけで使えるか?

A. 公式はFilmCraftを除く12本のブラウザ(WebAssembly)対応をうたうが、Jacarの報告時点ではホスト型のWeb版はなかった。現在の提供状況は公式サイトで確認してほしい。

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この記事について

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この記事を書いた人

映像クリエイター・AIクリエイター・SNSコンテンツクリエイター。プロダクトCMやブランドムービーなどのコマーシャル映像制作を本業とし、撮影から編集まで手がける立場から、海外で話題の新製品・サービスを『実際の仕事や暮らしで使えるか』という視点で紹介しています。
得意分野:映像制作機材・カメラ・AI活用ガジェット・次世代テクノロジー・海外トレンドのキャッチアップ

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