耳に何も入れないメガネ型補聴器「Legato Frames」登場、AIで騒がしい場所の会話の聞き取りを支援するとうたう 999ドルから
補聴機能をメガネのフレームに内蔵したメガネ型補聴器「Legato Frames」は、メーカーによれば、独自のAI音声処理で騒がしい場所での会話を聞き取りやすくするという製品だ(米国向け製品で、日本では医療機器としての承認・認証を確認できない)。価格は999ドル(1ドル=150円換算で約15万円)からで、日本での発売は現在のところ発表されていない。2026年10月11日時点での公式サイト(legatohearing.com)情報によれば、開発元はスタートアップのLegatoで、新製品として大きく打ち出されている。キャッチコピーは「Hear better. See better. Wear one device.(よく聞こえ、よく見える。身につけるのは1台だけ)」。独自の音声処理技術「SpeechSense AI™」と、耳をふさがないオープンイヤー型の音響設計を組み合わせており、見た目は普通のメガネのままながら、騒音の中でも相手の声をしっかり届けることを狙っている。ラインナップは「Symphony」「Harmony」「Aria」の3モデル。本記事では、公式サイト情報をもとに、補聴器の新しいアプローチといえるこのデバイスの特徴を整理していく。

Legato Framesとは? 「70年間アップデートされなかった補聴器」の刷新をうたう

Legato公式サイトの「Our story」では、共同創業者のSteve Romine氏による「Hearing aids went 70 years without a real update.(補聴器は70年間、本当の意味でのアップデートがなかった)」という言葉が紹介されている。
同社によれば、Steve Romine氏ともう1人の共同創業者であるCEOのMehul Trivedi氏は、これまでにBose Framesの開発やBose初のOTC(市販)補聴器「SoundControl」の立ち上げに携わってきた。さらにFDA(米国食品医薬品局)に働きかけ、OTC補聴器というカテゴリーそのものの創設にも関わってきたという。業界も技術も熟知し、何が足りないかを正確に把握していた – それが同社の語る創業の経緯だ。
Bose Framesは、メガネ(サングラス)型のフレームにスピーカーを内蔵したオーディオデバイスとして知られている。その開発経験を持つメンバーが、今度は「聞こえ」の課題にメガネ型でアプローチしたという流れには納得感がある。
従来の補聴器は、耳の中や耳の後ろに装着するのが一般的だ。そのため見た目が目立ちやすく、Legatoの比較表では「医療機器のように見え、他人から気づかれやすい」点が課題として挙げられている。また補聴器ユーザーには、視力補正のためにメガネを併用している人も少なくない。公式サイトでも「従来の補聴器はメガネと必ずしも相性が良くない」と指摘されている。Legato Framesは、メガネと補聴器を1つのデバイスにまとめようという発想から生まれた製品だ。
「聞こえ」は健康の問題でもある

Legatoは公式サイトで「Hearing is health(聞こえは健康そのもの)」と掲げ、認知症に関するランセット委員会(Lancet Commission)の報告を引用している。公式サイトは出典として、認知症の予防・介入・ケアに関するランセット委員会の2024年の報告(The Lancet Commission on dementia prevention, intervention, and care, 2024)を挙げている。Legatoによると、同報告が引用した研究(8件・延べ12万5,000人以上を2〜25年間追跡したデータ)では、補聴器を使用した人は使用していない難聴者と比べて以下のリスクが低かったという(比較対象の詳細は公式サイトに明記されておらず、数値は公式サイトの表記に基づく)。
- 認知機能低下のリスクが約20%低い
- 認知症のリスクが17%低い
さらにLegatoは、同委員会が難聴を「修正可能な認知症リスク要因の第1位」と位置づけ、喫煙・血圧・肥満よりも上位だと紹介している。なお2024年版の報告書では、難聴は高LDLコレステロールと並ぶ最大の要因(それぞれ約7%)とされている。一方で補聴器は「見た目が気になる」「面倒」といった理由で敬遠されがちだ。それだけに、導入のハードルを下げる製品の存在意義は小さくない。なお、これらは補聴器全般に関する研究結果であり、Legato Frames自体に認知症リスクを下げる効果が確認されたわけではない。
Legato Framesのスペック・特徴・価格
ラインナップと価格
公式サイトに掲載されている現在のラインナップは以下の3モデル(価格の安い順)。いずれも「Starts at(〜から)」表記のため、選択するレンズなどによって価格が変わるものと考えられる。円換算は1ドル=150円で計算した目安だ。
| モデル名 | 価格(〜から) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| Symphony | 999ドル | 約15万円 |
| Harmony | 999ドル | 約15万円 |
| Aria | 1,099ドル | 約16.5万円 |
全モデル共通:Bluetooth接続・音楽などのオーディオストリーミング・通話対応(※日本の技適の取得は確認できていない。技適のない無線機器を国内で使うと電波法に抵触するおそれがある)
英語表記では「Bluetooth connected」「Stream audio」「Take phone calls」とあり、補聴機能に加えてスマートフォンとの接続による音楽再生や通話にも対応している。モデル間の違いはフレームの幅やカラーなどで、報道によればSymphonyは幅134mm、Ariaは幅142mmでべっ甲柄(Classic Tortoise)のみ、Harmonyは幅140mmと145mmの2サイズを用意する。ただし、Ariaだけ価格が100ドル高い理由は明記されていない。
SpeechSense AI™:騒音の中から「声」だけを拾う
Legato Framesの中核となるのが、同社が特許技術として紹介する「SpeechSense AI™」だ。同社の説明によれば、この技術はリアルタイムで背景ノイズを低減し話し声を分離したうえで、ユーザーの聴力低下を補うように増幅するという。キャッチコピーは「Less noise. Clearer speech(ノイズは少なく、声はクリアに)」。
公式サイトには「騒がしいレストランでウェイターが本日のおすすめを読み上げる」というシーンのデモ音声が用意されている。SpeechSense AI™のオン/オフを切り替えて違いを聴き比べられる仕組みだ(ヘッドホンの使用推奨)。補聴器の世界では「Speech-in-Noise(騒音下での会話聞き取り)」が最も難しい課題のひとつとされており、Legatoはこの性能を前面に打ち出している。メーカーの公式発表によれば、聴覚機器のテストラボHearAdvisorが2026年5月に行ったテストでSoundScore 4.6/5を獲得し、同ラボがテストした機器のトップ10に入ったという。
耳をふさがないオープンイヤー設計
Legato Framesは「Nothing in your ears(耳の中には何も入れない)」をうたっている。メガネのフレームに組み込まれたオープンイヤー型の音響システムから音が届く仕組みで、耳穴に装置を入れる必要はない。公式サイトでは「軽量なフレームで、耳の中に何も入れずに済む」ことが快適性のポイントとして挙げられている。
処方レンズに対応
比較表では度付きレンズ(処方レンズ)にそのまま対応できるとされている。視力補正と聴力補助を1台で完結できる点がこの製品の最大の特徴だ。メガネと補聴器を別々に使うと、耳の上でメガネのテンプル(つる)と補聴器が干渉しがちだが、こうした従来のストレスを減らせるのはユーザーにとってうれしいポイントになるだろう。
使い方:開いてかけるだけ
公式サイトでは「Better hearing, right out of the box(箱から出してすぐ、より良い聞こえを)」として、以下の3ステップが紹介されている。
- 01 Wear:テンプルを開くと電源が入り、すぐに使える
- 02 Tune:Legatoアプリを使って、いつでも数分で音を微調整できる
- 03 Support:製品を使い続ける限り、米国拠点の専門家とオーディオロジスト(聴覚専門家)のケアを受けられる
「テンプルを開けば電源オン」という操作は、メガネをかけるときの自然な動作をそのままスイッチにした、よく考えられた設計だ。
保証・サポート体制
- 45日間のリスクフリートライアル(Risk-free trial/返金条件は公式サイトで要確認)
- 製品使用期間中のサポート込み(Lifetime support included)
- 最大3年間の保証(Up to 3 year warranty/「最大」となる条件は公式サイトで要確認)
なお公式サイトには日本での販売やサポートに関する記載は見当たらず、サポートについては「US-based(米国拠点)」と明記されている。規制上の区分について、メーカーは公式発表で本製品を米国FDAの規制下にあるOTC(市販)補聴器(軽度〜中等度の難聴がある成人向け)と説明しているが、FDAのクリアランス(510(k))や承認を得たとの表明は確認できなかった。日本では補聴器は薬機法上の管理医療機器にあたるが、本製品は2026年10月11日時点で日本での医療機器としての承認・認証を確認できない。記事中の聞こえに関する効果は、いずれもメーカーの主張である。日本から購入・利用できるかどうかは現時点では不明だ。
Legato Framesと従来型補聴器の比較(価格・見た目・快適性)

Legato公式サイトには自社製品と従来型補聴器の比較表が掲載されている。内容を整理すると以下のとおり(円換算は1ドル=150円の目安)。
| 項目 | Legato Frames | 従来型補聴器 |
|---|---|---|
| 性能 | メーカーによれば、HearAdvisorの2026年5月のテストでSoundScore 4.6/5を獲得し、テスト機器のトップ10入り | ブランド・モデルにより大きく異なる |
| 見た目 | 普通のメガネに見える。複数スタイルあり | 医療機器のように見え、気づかれやすい |
| 快適性 | 軽量フレーム。耳の中には何も入れない | 一日中、耳の中に装着 |
| 価格 | 2-in-1で999ドル(約15万円)から | 処方型の聴覚ソリューションは平均3,400ドル(約51万円)以上 |
| メガネとの相性 | 度付きレンズにそのまま対応 | メガネと必ずしも相性が良くない |
| サポート | 専門家によるサポート込み | 提供元によって内容・料金が異なる |
中でもインパクトが大きいのが価格だ。Legatoによると、オーディオロジスト経由で購入する処方型補聴器などの聴覚ソリューションには平均3,400ドル以上かかる。これに対しLegato Framesはメガネと補聴機能の2-in-1で999ドルからとしているが、999ドルに度付きレンズの費用が含まれるかどうかは公式サイト上で明記されていない。
また補聴器以外で比較対象になりそうなのが、近年増えている「AIグラス」や「オーディオグラス」だ。カメラを搭載し撮影やAIアシスタントとの対話を主な目的とするAIグラスと比べると、Legato Framesはあくまで「聞こえの支援」と「視力補正」に特化した製品である。見た目は似ていても目的がまったく異なるデバイスであることを理解しておく必要がある。
筆者コメント:AIグラスとは別物の「聞こえ支援メガネ」をどう評価するか

正直に言うと、最初にLegato Framesを見たときは「また新しいAIグラスが出たのか」と思った。メガネ型で、Bluetoothで接続できて、「AI」という言葉が入っている。ここ数年で山ほど見てきたカテゴリーだ。ところが中身を読み込んでいくと、これはカメラを搭載せず、録音もしない「聞こえ支援メガネ」であり、AIグラスとはまったく別のジャンルだと分かった。
AIグラスは「撮る」「記録する」「AIに尋ねる」ための道具だが、Legato Framesは「騒がしい場所で相手の声を聞き取る」「度付きメガネとしてよく見える」ための道具だ。同じメガネ型だからといって、AIグラスの物差しで「カメラがない」「AI機能が少ない」と評価するのはお門違いだろう。新しい機能を持ったデバイスとして、AIグラスとはまったく違う評価軸が必要だと感じている。
そのうえで、メガネ型デバイスを自分が実際に使うなら、何より重視したいのは重さだ。メガネは一日中顔に乗せるものなので、数グラムの差が夕方の疲れ方を大きく変える。公式発表では重量は「レンズ込みで34gから」とされているが、度数やレンズの種類によって変わりうる。もし普通のメガネと変わらない重さで使えるのであれば、「一度使ってみよう」と思える。逆に、明らかに重いならどれだけ機能が優れていても日常使いは厳しい。ここは今後ぜひ確認したいポイントだ。
一方で、個人的な事情として「これ以上身につける物を増やしたくない」という気持ちも強い。私はいまApple Watch Ultraと、AI文字起こしデバイスのPlaud NotePinを日常的に持ち歩いている。持ち物はできるだけ少なくしたいタイプだし、正直なところ物忘れもしやすい。身につけるデバイスが1つ増えるたびに、充電の手間も、忘れ物のリスクも増えていく。
ただ、Legato Framesの面白いところは「増やす」のではなく「まとめる」製品だという点だ。もともとメガネをかけている人にとっては、メガネが補聴器を兼ねるわけで、身につける物の数はむしろ減る。キャッチコピーの「Wear one device.」は、まさにこの点を突いている。メガネユーザーで、かつ聞こえに不安を感じ始めている人にとっては、「持ち物を減らせるデバイス」として非常に合理的な選択肢になり得るはずだ。
もうひとつ強く感じるのは、AI搭載デバイスがもはやチェックしきれないほど多くのメーカーから出ているということだ。毎週のように新しいAIガジェットが発表され、すべてを試すことは到底できない。映像制作と経営を両立している私のような忙しい人間にとっては、「話題だから買う」のではなく、自分の生活と仕事にとって本当に最適なものを見極めて選ぶことが大事な時代になっていると思う。Legato Framesは、その意味で「誰にでも必要なガジェット」ではなく、目的のはっきりした製品だ。
Legato Framesはどんな人におすすめ? 注意点と総評
Legato Framesは以下のような人に特に響く製品だと考える。
- すでにメガネを日常的にかけていて、聞こえにも不安を感じ始めている人:1台で視力補正と聴力補助をまとめられる
- 補聴器の「見た目」に抵抗がある人:普通のメガネに見えるデザインで、耳の中には何も入れない
- レストランや会議など、騒がしい場所での会話に苦労している人:メーカーによれば、SpeechSense AI™が騒音の中から声を分離・増幅するという(日本では医療機器としての承認・認証は確認できない)
- 価格の高さから補聴器の導入をためらっていた人:999ドル(約15万円)からと、従来の処方型ソリューションの平均(3,400ドル以上)を大きく下回る価格設定
一方で注意しておきたい点もある。メーカーの公式発表では、重量はレンズ込みで34gから、バッテリー駆動時間は10〜12時間(公称、使い方によって変わる)とされているが、度付きレンズの費用が価格に含まれるかどうかは確認できない。また、サポートは米国拠点とされており、日本での販売・サポート体制や規制上の扱いについての記載もない。日本のユーザーが今すぐ手に取れる製品かどうかについては、今後の展開を待つ必要がある。
総評として、Legato Framesは「補聴器をメガネとして再設計する」というシンプルながら業界の常識に一石を投じる発想の製品だ。Bose FramesやBose初のOTC補聴器「SoundControl」に携わったメンバーが手がけているという背景も、単なるアイデア商品にとどまらない説得力を与えている。EssilorLuxotticaの「Nuance Audio」など補聴機能付きメガネの先行製品もある中で、カメラ搭載のAIグラスとはまったく別の物差しで評価すべきウェアラブルとして注目に値するだろう。日本展開の情報が出てくれば、重さや装着感を中心にぜひ確かめてみたい一台である。
本記事の情報は、Legato公式サイトの2026年10月11日時点の掲載内容に基づいている。価格・仕様・保証条件などの最新情報は公式サイトでご確認ください。
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